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不動産投資における融資の話題はいつでも人気があり、特にフルローン、オーバーローンを望む方々の興味は深い。結論からいうとそれはいつでもできる事であり、それ以上の借入方法を駆使するようになるのが賃貸業である。
一定以上の投資家は、自己資金を一円も使わないどころか自己資金を大きく増やすような物件取得プランを組立てる。
取得後には当然キャッシュフローを生む。このような取引もいつでもできるようになる。どのような形に整えるか迄計画して実行するのだ。
融資の話の中ではその手法やロジック解説をテーマにするとネタが尽きる事はないが、土台、基礎を身に着け、活用できるように導くほどの精度を持つ情報は見つけ難い。
曖昧さを残しては、不動産賃貸業における最も大きな強みである資金調達の力を発揮できないだろう。
この記事では、前半に不動産ローン・融資に対する注意点と固定概念を壊す為、”見えずらい”基礎情報を紹介し、後半に融資の仕組みについて一つずつ、そして統合して解説する。
基礎を完璧に理解して頂かないと今後紹介していく有効な手段やテクニックについても当人にとっては絵空事になってしまうだろう。吟味しながら読み進めてほしい。
今回は特に物件取得時に利用する融資を中心に解説していく。
注視すべき事と真常識
スルガ銀行ーかぼちゃの馬車事件でクローズアップされた過融資問題や 1 法人 1 物件スキーム等と言われ最近特に話題となる不動産融資問題であるが、この両者とも個人向けにパッケージ化されたアパートローンがキーとも言える。もちろんその問題点へのアプローチは異なるが。
アパートローンは、個人で利用すると一般に信用情報機関に記録される。信用情報とは CIC によると下記の通りだ。
「信用情報とは、クレジットやローン等の申し込みや契約に関する情報を指します。本人を識別するための情報のほか、クレジットの申込内容や契約内容、支払状況、残高などで構成されており、主に CIC に加盟するクレジット会社等から登録された情報になります。」
このパッケージ化されたアパートローンを不動産投資の現場では主に「消費性融資」と表する事が多い。対となる「事業性融資 ( 事業性評価に基づく融資 ) 」と比べるまでもないが、通常の一般融資としてみても融資基準が甘い点が特徴だ。
不動産投資を目的とするものに対し、担保割れ ( 詳細は後述 ) が激しい場合でも購入者の本業 ( 給与収入等 ) の収入次第で融資金が伸びてしまうという恐ろしい商品ともいえる。
消費性融資は、全く別業種の表上の収入が安定していればよしとしその余剰収入が多ければ多いほどに大きな債務超過状態がつくれてしまうという特徴があり、借手からみると猛毒になりうる商品と表現してもいいかもしれない。
スルガ・かぼちゃ問題はここに目をつけた業者が購入者の収入によって価格を変えていたという。収入が多い人ほどひどい借金を背負ったといえるだろう。
1 物件 1 法人スキームは法人であれば信用情報に記録されないという点をつき、各金融機関毎に借金が見えないように、隠して融資させてしまうという手法だ。
金融機関を騙しているという点でも罪であるが、消費性融資をつかい、顧客に法人を作らせそれぞれ債務超過枠をいっぱいにそしておかわりまで借金させていたわけだから業者も悪質といえる。
もっとも購入者自身がそれを望み、取り組んだという数も相当数あるらしいので、知らないというのは恐ろしい。債務超過とは負債が資産より大きくなり、資産をすべて売却しても負債を返済しきれない状態をいう。
借入枠は問題ではない
不動産投資をしていて借入枠がなくなるパターンは 2 つある。一つはアパートローン ( 消費性融資 ) の場合、団体信用生命保険付きでなければ融資承認は降りない問題である。
団体信用生命保険は各銀行用意しているが、金額の枠がある。
単に団信枠を使いきったというだけならば全く問題ない。 3 億規模の資金を適切に調達しているならば、事業者として融資申し込みをすればいい。
団信は不要なので問題ない。自身が団信と同じような条件を揃えたいと希望するなら収入保障保険 ( 掛捨定期 : 保険会社により名称は異なる ) を別途付保すればよいだけだ。枠もおおよそ一保険会社につき 10 億前後ある。
つまり、上記のように単に団信枠だけの問題であれば、例え最初に消費性融資といわれるタイプのアパートローン等で融資を受けていたとしても事業展開はその先も続く。本当に適切ならば加速もできるだろう。
問題は団信枠ではなかった場合だ。
不動産投資は収益を上げていくことが目的なので取得物件が増えていけば賃料収入も増えていく。
本来ならば借入ができないという状況に陥る事はない ( 初取引の後、運営状況を見るためにしばらく間ができるのは別 ) 。しかし、買いすすめた結果、どの銀行にも融資枠いっぱいと言われ物件取得ができなくなった人は多いだろう。
これは上記で述べたように債務超過が大きくなりすぎているか、収支面において危険水域に達してしまった為、またはその両方である。
今まで融資を受けれた理由は、自身の本業 ( 賃貸業ではない ) の余剰収入をもって、対象不動産で補えない部分を自身の労働力を資源に貸付してもらっていたにすぎない。
これは単に債務超過額が大きくなっているだけでなく収支についてもリスクを含む状態になっている場合が多い。
今まで借入できた理由は本人が優秀だからだが、不動産投資という名のもとに本人が不動産に食われている状態だといえる。
キャッシュが回っている内には気付き難いかもしれないが、危険水域に達したというサインなのだ。物件保有後、入居者が一、二回転した頃に驚くほどコストが増えるタイミングに遭遇する。
論点としては先にあげた消費性融資であろうと事業性融資であろうと適切な借入をする事が肝要なのだ。金利や借入期間には驚く程に細かい人は多いが、むしろ対象物件に対する借入そのものに対して注意を向けてほしいところだ。
視点は大きく 4 つ
融資審査において物件評価や物件に対する審査基準に興味をもつ人は多く、確かにその影響は大きい。
しかし、それ以上に自身で把握しなければならないこととして、対象物件以外の部分、つまり自身の財務状況、現時点で保有している資産・背景がどのように見られるのか、実態としてどれほど力が蓄積されているのかである。
どうみられるかは審査する側の目線、実態として客観的にみるのは自身の事業の為だ。
お読みの方の印象とはもしかしたらかけ離れるかもしれないが、現在、融資の締めつけが強くなったと言われる状況であっても、銀行の不動産に対する融資は実際の運営実態と照らし合わせると驚く程緩い。
これは金融機関が不動産賃貸業の実態を把握しているからと私は考えるが、調達している人の認識は異なる場合が多いだろう。
上記、白書によると金融機関が担保・保証以外に評価しているベスト 5 の項目は下記のようになる。
財務内容 99%
事業の安定性・成長性 94%
経営者の経営能力や人間性 76.9%
会社や経営者の資産余力 63.8
返済実績・取引振り 59.4%
人間性の部分は数字で表れる点もそうでない部分も若干含まれるが全て数字に表れる項目である。担保・保証以外に評価している部分としている事から言うまでもなく担保は重要だ ( 意向としてはその比率を下げたいとしているが ) 。
要するに財務内容、担保をどのような視点で構築していけばいいのか (仕入、経営していく事 ) を検討すればいい。
最も重要視される財務内容に関してが中心になるものの、決算書の分析方法を解説するつもりはない。
それらを扱う方法、見方は知っているだろう事を考慮し、焦点を当てるべきポイントにしぼり解説していく。
また、給与所得の方、自営業の方の中で白色申告の方もいるだろうからこのポイントを抑えることで同じ解釈に到れるだろう。
尚、先に触れておくが上記の 5 つをみても理解できるようにこれから解説する 4 つの視点は全て連動している。
そして連動し続けるという事を認識してもらいたい部分として先にお伝えさせて頂く。
対象者の収支状況
損益計算書は利益を示すものであり、第一段階、つまり融資取引なしの状態であれば、大まかな捉え方としては、投資をする余力があるのかという点が大きいと考えられる。
給与所得者であれば、実際の生活費を控除してみて投資するべき余力がある方かどうかがポイントだ。
投資余力があるかどうかとして、各金融機関の数字は恐らく若干異なるが統計を基準 ( 参考 : 経済産業省・統計局「家計調査 ☑」 ) として余力判定している ( システム化 ) ケースが多い。家族人数、年齢により指数は変動する。各銀行で扱う数字は当然非公開だが、ずばり聞くと教えてくれるかもれない。
目線は決して厳しいことはなく、例えば私が担当した案件の中には時期に関わらず単身者で年収 200 万円台で借り入れを利用し不動産投資を開始された方も複数いる。
単身と非単身の差は大きくなるがどちらかというと家族が多い方が生活費の差し引きは大きいので実態に合っているともいえる。
また持ち家で住宅ローンがある場合は、そのローン返済額が住宅費として適応される。賃貸であった場合もその住宅費は考慮されているので実はあまり変わらない。
住宅ローンがあると不動産投資の枠がなくなるから不利だというのはアパートローン等の場合の話である。
最もその住宅ローンが実需不動産としてみても債務超過となるような金額の残債があれば足を引っ張るが、これは後ほど触れる。
また、住宅ローン以外の融資利用がある場合はローン返済分 ( 車のローン等 ) 、カードで分割払いをする人はその枠がそっくり余剰収入より差し引かれて判定される。余談だが、借入機会が多い不動産賃貸業はカードの分割払いは毒である。
物件取得以後はそれぞれ、物件の収支、ローンの返済が数字に加わり、常に安全圏内にいるかがチェックポイントだ。計画どおりであればキャッシュフローは増えているハズである。この物件取得後に取得前よりも数字に表れるプラスが増えているか要チェックだ。
要するにキャッシュフローが生活費を控除してもプラスに傾いているか。物件取得後は、取得前よりもプラスになっているか ( 増えているか ) が重要ポイントだ。
当然のことながらこのキャッシュフローは多ければ多いほどによい。先に年収 200 万円台から開始された方もいるがという旨に触れたが、勘違いしないで頂きたいのは実行可能であるだけで取引の幅は極小。
相当な投資精度が必要である。一つでも間違った物件を取得すれば物件取得はできなくなる。少ないより多い方が当然に幅も広がり利の大きな取引がしやすい。
キャッシュフローが減り要注意先として認定されると金融機関はあなたの借入に対し、引当金を積み上げねばならなくなるのだから。
積み重ねられた実績
年収が 2000 万円あって、計算上の余剰金は年に 1000 万円以上あるはずなのに自己資金が 100 万円しかないという人にお金を貸す人がいるだろうか。企業にとっては貸借対照表がどのように富を蓄積しているか、継続的な実績を表す。
キャッシュフローが増えれば純資産が増えていきそうなものだが、事業は資本を変換させて利益を増やしていくものだから変換先の資産が増えている場合もあれば減っている場合もある。
連動して現金の増減もある。貸借対照表に現れない実態を把握する為、別途保有不動産についてはそれぞれ簿価上の数字だけでなく担保評価もされる。
それらを明確にするのが貸借対照表の役割であるが、給与所得者や白色申告の事業者は貸借対照表がない。
お金の流れが見えない部分が多いこの二者には資産をみせてもらわないと恐ろしくて仕方がない。年収は多い散財者は非常に多いのだから。
不動産を購入し、融資を利用したいという際に自己資金をいれてほしい、満額まで融資を下ろさないという規定を表立って明示する銀行もある。
ここには確認と保全が含まれている事に気づいただろうか。
一つは実績として投下できる自己資金が蓄積されている事の確認、もう一つは担保割れに対する保全。
先にあげた損益計算書と連動しているのである。給与所得者等の場合、支出の確認ができない。
その不確定部分を確認したがるのは当然だ。
一方、場合によっては業をなす上で手持ち資金、動かせる資金があまりに少なくて困るケースもでてくる。
対象不動産の担保に問題がなければ、現金を寝かす場所をその金融機関に明示、または移してもいいだろう。他の資産、例えば株式等をエビデンス書類として提示するのも効果的だ。
担保が足りないような大きな取引をしようとしている場合には明示だけではなく担保設定させてくれ ( 預金担保等 ) と言われるかもしれないが、それも状況次第だろう。
多くは事前に金融機関側と認識を合わせておけば残債が減れば区分けで担保解除できるのでそれほど警戒する必要はない。柔軟に対応してくれるケースは多々ある事を知っておくとよい。
共同担保利用する場合の注意点は以前 Twitter でも触れたので共有しておく。
共同担保を随分押すが、担保の穴埋めで連鎖的に物件繋ぎ止められてしまうのは事業展開上あまり好ましくはない。
どちらか一方の処分で完済、処分の順番が確定的で換金可能かのどちらかが成立しなければならず、成立せねば選択しない。
一定以上の投資家・賃貸業者は資金使途作って個別でお金引き出す
— KARYU () March 24, 2019
取引が進み上級レベルの資金調達では、複数案件を組み合わせ、資金使途をつくる目的で上記と逆さ、つまり自己資本の投下を大きくする手法をよく使う。
得ようとするならば先に出し、大きく引き上げるが資金調達には非常に優位に働くもので、プランによっては取得価格を大きく超えるように整える資金調達も可能だ。
重要なのは捉え方であるので一つずつよく理解してほしい。
物件収益力
ここでいう対象不動産の収益力とは資金調達の観点での見方である。実際の物件収益力に関しては以前紹介した下記の二つの記事を熟読頂きたい ( 物件を運営して稼ぎうる金額を割出し注目してもらいたい ) 。
資金調達の際にみる物件収益力と運営実態は別物だ。
不動産の賃料収入の内、どの程度が返済原資として見ることができるか。
金融機関は資金を貸す商売であるから揃えられた情報からその返済原資を見極める。通常、単年の満室賃料収入に対して 60% 程が返済原資としてみられる。
基本的に最終的な決済を行う審査官は紙上のデータをみて審査する。その為、中古物件の場合、審査に必要であろう修繕履歴等、コスト懸念がでそうな事項は先に明示するべき書類だ。
この 60% という水準は金融機関によって異なり、審査金利でみて 60% 見るところもあれば、実行金利でみて 50% 以内とする場合というように各金融機関の審査基準により多少は異なる。
運営期間が短いプランの場合を除いて 60% という返済プランを採用する人はいないだろうが、物件の資金調達力の一旦として捉えてもらうといい。
この返済原資 ( 年額 ) を元に年賦償還率 ( 元利均等償還率 ) で割り戻した額が対象不動産の収入面からみての調達枠といえる。
簡単に言うといくらまで調達したらその返済原資の支払額になるかを割り出す作業だ。
金利と期間設定の内、金利設定は難しいものだが基本的には審査金利、まだ取引のある金融機関が少ない場合はどこでも通用する審査金利基準でみておくとよいかもしれない。
また、返済年数の設定については、物件担保力の章で解説する。念のため触れておくが、基本は残耐用年数だ。
見方を理解すれば解決法が見いだせるのであまり囚われる必要はない。整えられた条件での取引では返済期間はあまり問題にならない。
収益性からの融資金の基準額が割り出されただろう。
収益還元法に関しては、「不動産の利回り完全解説。「意味と効果」を読み取り活用し尽くす方法 ☑」で数字の捉え方、 DCF 法によるキャップレート、収益価格の算出までを解説している。合わせてご覧頂くとよい。
物件担保力
担保とは債務者が債務をしない場合の債権者の損害を補うために設けられたものであるから、不動産担保について極めて簡単な表現をすれば即現金化できる額の事である。
実際に担保により債権回収しなければならなくなった際には、その物件が収益物件であるからプラスに働くという事はない。
担保による債権回収を目的とするからであろう、一般に住宅地では使わない原価法による評価にて物件を洗う。
俗に積算評価と言われるが、建物価格と土地価格を割り出し銀行所定の割引率を適用し担保価とする。
しかし、この担保価の割り出しにおいて借りる側が把握しなければならない点は、先にあげた即現金化である。
各銀行によって割引率は異なるが求める答えはほぼ同じ値にいきつく。
仮に所有権のアパートとして、下記の公式に当てはめると金融機関側がみる担保価とほぼ一致する ( 土地形状、状況による割引率、整地費等を加味した細かな計算まですれば。
金融機関側が見落として担保を高く見積もるケースもある ) 。
貸家建付地としての土地の時価 + 【建物価格×借家権割合】 - 退去費用 - 解体費用
上記の計算式をみると厳しいと感じる人もいるかもしれない。しかし、借手として緊急事態になった時に保全が取れるか精査すると難しいケースもでてくるラインだと言える。
しかし、市況により実勢相場との乖離が大きい時、これからしばらくはその機会はあまりないが上向きの時期には取引事例を添えて担保審査に考慮されるかもしれない。
尚、借入期間の残債推移と物件の担保価推移が割れない事が肝要である。融資期間が一般に残耐用年数を基準とされるのもこの担保割れの問題があるからだ。
また、上記計算式によって担保価として捉えられるのは取引の浅いうちともいえる。
資産背景、財務状況がよくなっていき、金融機関側が付ける格付が上がると審査基準も変わってくる。
別談になるが不動産は個々の個別性による影響は強く、原価法による評価だけでは実勢価格と乖離が大きいケースが多い。
自身の緊急事態対応の為にも自分の為にも担保評価はしておく事をおすすめする。
アパート投資での必勝投資戦略は「アパート投資の公式。「必勝・必負」はたった一つの法則で決まる ☑」で紹介している。
区分マンションが対象の場合は、以前に触れた事があるが東京カンテイの評価から各銀行所定の指数をいれて担保評価とするか、固定資産税評価額を担保価として見る場合が多い。
但し、ノンバンクを除く金融機関は所謂ワンルームマンションは初見のお客様に対し基本融資の対象にしていない。区分マンションの勝利の方程式を知りたい方は「区分マンション投資指南書。必勝の道は「坪賃料と実需」にあり。☑」をご参照頂きたい。
フル保全のライン
物件の収益性と担保価が割り出せると、物件そのものに対する基準価格がでてくるだろう。
例えば収益性から見た金額が 8000 万円、担保価が 7000 万円とすると基準値は 7000 万円。この金額までであれば借手に大きな問題がなければ誰でも調達できる額ととらえてよい融資枠といえる。
そして把握しておくべき事として、対象物件は収益力に 1000 万円の余力があること。 1000 万円分の担保を用意できれば 1000 万円は問題なく融資金を伸ばす事もできるといえる。
不動産の融資を駆使し様々な資金調達プランを描く際にはこの物件そのものの保全ラインを精密に把握する事が肝要でプラン・実行の為の絶対条件と言える。
融資金が伸びる条件
では、上記と逆のパターンはどうだろうか。担保価が 8000 万円、収益性から見た価格が 7000 万円だった場合は、損益計算書上の余剰収入に安定性を認められればやはり無理なく調達できる。
物件と財務状況を全体で捉え、信用が一切でていない状況、フル保全の貸出条件とすることが融資利用の際の鍵だ。
一方、自己資金を自己の元に置いておきたいという状況下。
特に対象物件に対する事業プランにおいて運営期間が短くプランニングしている時や収益の比率として運営益よりも売却益の比重が高い場合、借入金の比率を上げたい事も多々でてくる。
その際、物件が調達できる額を超えて融資を受ける場合は、損益計算書・余剰収入であり、貸借対照表・余剰資産が影響してくる。
特に不動産賃貸業として考えると保有不動産に対する評価が重要である。
保有不動産、借入額、返済予定をみて一つずつ保全が取れているかまず精査される。
ここで保有不動産の担保価と借入額を照らし合わせ、債務超過になっていないか、返済比が高くリスク不動産がないかというように見られる。
対象者の財務状況をみて 5000 万円、最近のアパートローンセット商品を利用された方々だと億規模の債務超過状態が簡単にできあがっているかもしれない。
債務超過状態の物件を保有していると収益余剰があったとしても保全が取りきれず融資金は削られての回答かもしれないし、融資対象外にされてしまうかもしれない。
担保が足りない部分というのは無担保融資に等しいのだから。
逆に適切な不動産を取得し物件それぞれに対し、余剰が見いだせる背景となっていれば資金の伸ばせる材料を見つけられるだろう。
信用が及ぼす影響
不動産投資を開始された多くの方はスタートラインでは上記のような審査の目で財務状況や対象不動産を見られる。
しかし、その資産背景、財務状況が強くなり金融期間の格付があがっていくと、不動産取得に対する担保評価も財務内容で吸収できるからであろう、融資金は著しく伸ばせやすい。
借入がしやすいから借りるではなく長期的、拡大的な資産形成をしていくためには対象物件そのものの資金調達力と自身の財務状況を分離して捉え、そして統合して捉える目線は非常に重要だ。
金融機関の担当者は一定期間で別の支店に異動してしまう。
成績重視の担当の場合、折角蓄積してきた力、財務内容を破壊させるほどに貸し付けてくれてしまうので、自身と物件に対する把握力こそが自己防衛になるという事を認識頂きたい。
まとめ
不動産融資の基礎の基礎といえる内容であるが、ある意味最も重要な視点を明示してきた。
重要な視点とは収入 ( キャッシュフロー ) を示す損益計算書、資産背景・実績を表す貸借対照表の見方と成長のさせ方。
そして物件の収益力、担保力を把握する見方 ( 金融機関目線 ) を照らし合わせ、物件そのものの資金調達力を導きだす。
物件力といえる資金調達以上に融資金を伸ばす基準、考え方は損益計算書と貸借対照表から見出すこと。
いづれも当たり前の積み重ねであり基本中の基本の話であるが、どういうわけか不動産投資の特に資金調達に関する情報にはあまり見られない部分かもしれない。
あとがき
融資が引き締められてローンが厳しいという風潮が強まっているが、貸手がどのように資金を提供するのか、どこを重要視するのか、そしてどうに力を蓄えていけばよいのかを理解すれば引き締めの影響を受ける事がなくなる。
様々なところで不動産融資の話は盛んに行われるが単発的なものが多く、実際の所、市況に依存する方法がほとんどである。市況が低迷すれば通用しないではマスターしても意味がない。
あくまで不動産投資における資金調達の話になるので金融的な話は可能なかぎり排除しつつ話を進めてきたが、理解は及んだだろうか。
正直なところ優秀な金融マンから見たら当たり前な内容の積み重ねにすぎなかっただろう。
しかし、その当たり前の積み重ねに賃貸業の発想と良プランが組み合わさってものすごい資金調達方法がプランニング、実行されていくのだと私は考えている。
皆様の役にたつ記事である事を願う。