アパートだけでなく、不動産投資・経営をするならば全てに適用される法則だが、非硬固建物であるアパートは、この法則の影響を非常に受けやすい。 そしてその法則をみてどのように理解するかで投資家レベルも図れる。法則は以下だ。 予定総収益と残債額をコントロールするものが勝ちを得、減価速度の調整を誤れば必ず負ける。 一般的な投資家は、総収益をキャッシュフローと捉え、残債額との調整には目が向く。しかし、減価速度の調整には気づくところがあるかもしれない。 一流の投資家は、総収益を運用全期間内の事業収益と把握し、運用前から全て設計を済ませ取り組む。 この記事ではまず、その法則、論理過程を解説し、アパートを投資対象とした場合の注意点を新築、中古に分けそれぞれの特性、対応策を例示、実践に向けた解説を行う。 法則の意味するところ・POINT 不動産投資初心者や投資歴の浅い投資家は利回りを重要視し、総収益と残債額のバランスというとキャッシュフローのバランスに注視しがちである。 しかし、その視点は当然、必要だが足りない。一部にすぎないと言える。 総収益とは何か。重要視べきは? 不動産投資・経営を目的とする場合、単年度の収益ならず投資対象が生み出す利益・損失に加え時間的効果を視野にいれなければ選択しきる事はできない。 具体的には、キャッシュフロー、売却益、利潤を手にするまでの期間の三つである。 上記の重要性は、「利回り」に関して追求した以前の記事「不動産の利回り完全解説。「意味と効果」を読み取り活用し尽くす方法 ☑」をご覧頂くと、その際に対象物件の収益価格を算出した過程でみる、投資効果と現在価値の観点が把握しやすいと思う。 投資額に対し、元本回収は当然として、その利益がどの程度の利率で運用できるのかを把握しなければ投資対象を選ぶ事はできない。 同じ額利益を生む場合、期間が長ければ利率は低くなる。投資効率が悪いという事になる。 上記の解説で理解が深まったと思うが、投資対象が生み出す「利益」は、キャッシュフロー+売却益、ともに自身が回収する全ての資金(税引後)である。 投資効率の視点がない場合、運用(保有期間)を定める事はできない。投資効率を視野にいれずに投資対象の不動産を選別、運用する多くのものは、時点のNCFに錯覚し保有し続け終了期に愚かな運営をしたものだと嘆く。 減価と残債額のバランス この視点は2つの視点から見る必要がある。一つは資金調達元(金融機関等:貸付元)の視点、一つは自身の視点である。 貸付元・金融機関目線 金融機関をはじめ、貸付元となる立場では貸出金の回収が担保されるかに当然注視する。その為、建物の減価により評価が下落していく担保不動産と貸付期間中の時点毎の残債額の推移を重視する。 融資・資金調達との関係残債額が超過してしまう時点、超過部分を「信用がでる」というが、この信用を埋める何かがあるかで融資承認が左右される。 スルガ銀行の問題で引き締めの方向に進んでいるが、融資が緩いとは信用の穴埋めにサラリーマン等の安定的な収入を安易に補填材料と認めてきた所にある。融資姿勢は刻々と変わる。 現在は世間で言われるほど引き締めが厳しいわけではないが、非常に厳しい時期になった場合は、格付がある程度高くないと、信用を埋める要素はかなり限定され、担保提供以外認めないという所まで引き締められる。 しかし、理屈を理解しているものには不動産投資、賃貸業で資金の調達に困るという事はあり得ない。この解説の通りである。 投資家・自身の目線 先に述べた通り、期間内の総収益(運用期間のCF+売却時受取額)への注視が最重要である。 それに加え、金融機関の目線をとらえておくことで自身の信用力を厳密に把握する事ができ、新たな投資先への資本投下も可能とできる。 利回り、キャッシュフローをベースに物件を選別した先にはリスクに見合う収益力が必要だ。理由は信用がでている期間が長く、即ちリスク(この場合は負のリスクのみ)が大きい。 自身の投資対象物件の売却・受取額というのは一種の保全されたそれこそ元本である。融資を利用している場合、元本を超過する部分は無担保ローンと変わらない。 リスクと収益力の関係、収益価格算出は、上記でも触れた「不動産の利回り完全解説。「意味と効果」を読み取り活用し尽くす方法 ☑」を参考に。不動産の融資、資金調達や売却価格の算出は下記、各Free Toolをご利用頂くとよい。 https://karyu.co.jp/service-free-tool/inv-loan-calculation https://karyu.co.jp/service-free-tool/automatic-calculation-of-market-value https://karyu.co.jp/service-free-tool/simulation アパートを不動産投資先とした場合の特徴 アパートとは端的に言うと非堅固建物。1棟の建物であるがその建物構造が木造、軽量鉄骨といった種類のものである。構造による法定耐用年数の短さが硬固建物と比べ、顕著である。 木造アパートは建物を22年で償却していく。建物に対する平均減価は年4.54%だ。軽量鉄骨は19年(3mm以下)となり年間の減価は5.26%となる。 アパートは建物分の価格下落が速い 上記で述べた通り新築物件であったとしても法定耐用年数が短いということは、建物減価が早く進む事を意味する。いや建物より重要なのは利回りなのだと主張する方もいるだろう。 しかし、残念ながら日本の不動産投資市場において不動産の流通価格は収益価格だけで決定されない。市場が好調の際には収益価格の比重が高くなりやすいが時価評価(原価法による評価)が収益価格に追いついていなければ融資の利用は難易度が高くなる。 減価償却による簿価上の減損ということだけでは済まない。 不動産において融資利用がどの程度できる物件なのかという点は非常に重要であり、取引価格に直に影響する。 建物に対して年間4.5%から5.2%減価していく。中古物件であればその減価速度は更に早い。 投資の目的は利益の追求。先に挙げた期間中のキャッシュフロー+売却益(受取額)を増やす事が目的。 リスクを加味された投資決定額(収益価格)は、減価の幅を調整する事で決定できる。投資額全体の割合としてあまり大きくない方が確実性が増す。 融資利用をする場合、減価幅が大きな取引をする場合、信用がでやすくなり資金調達難度があがる。 その為、取得すべき取引値、NOI利回り、*Drは、事業プランによって変わるのである。 *収益還元法(DCF法)のキャップレートにあたるDr「割引率:discount rate」 土地と建物の構成・比率がもたらす影響 通常不動産以外の投資対象を選択する時、将来にかけて価格が下落することが確実視されているものを選ぶだろうか。 アパートを対象とした不動産投資の場合、問題となるのは上記で挙げた建物の減価幅だ。通常不動産を取得する際には土地と建物を一体として取引する。 投資対象金額が土地建物合計金額。つまりその物件を取得する際の比率構成に目を向ける必要性がある。ここでいう比率は簿価上の比率ではない。可処分価格としての比率だ。 可処分価格=担保価。即現金化できる額。常に把握しておくことが賃貸経営、融資利用に関しての問題解決力、理解力を向上させる。 新築アパートで木造だった場合、法定耐用年数は22年であるから年間減価は4.54%であると述べた。 しかし、投資金額に対する建物の比率が半分であった場合は4.54パーセントの半分で抑えることができる。4.54%の半分となる2.27%だ。 土地の比率が高い投資先であれば減価幅は最小限に抑えられる。 逆に建物の比率が高い物件を利回りベースで取得した際は、この下落をダイレクトに受けることになる。 イールドギャップ傾倒の危険性イールドギャップとは投資利回りと長期金利との差のことを指す。NOI利回り5%の物件を金利2%で運用すればその金利差3%がイールドギャップ。投資指標に使われる。 金利差はあれど、不動産の場合、減価幅が存在し、個人・中小企業が対象にする規模の特に居住不動産「Residence」(レジデンス・レジ)ではその減価幅が取引価格に直結するケースが多い。 減価幅を考慮しないと現実に得られる利益としては確保できない。また、借入を起こす場合、キャッシュフローに視点を置くと、元本(残債額)の減少は、元利均等返済では一律ではない為省くが、元金均等返済で考えると問題点を理解しやすい。 元本の償還は30年返済で約3.3%、20年で5%の減少幅である。利息が2%であればそれぞれ約5.3%、7%超のNOIが必要になる。超をついた理由は税金分の確保が必要な為。 この指数は、資金調達において、元金一括返済方式を選択する投資家には、出口変動が少ない場合に非常に有効な判断指数である。 アパート投資の注意点・優位点 不動産投資を行う場合、この減価していく速度を加味し最終的に売却後利益を確保できるかどうかが全てである。非堅固建物であるアパートはとにかく減価速度が速い。この速度に対応する事が全てであり注意点だ。 自身の利益確保を確実なものにする点において、アパート、非硬固建物を投資対象にする場合、硬固建物に比べ2つの点で優位である。 投資不動産、1棟物の中で最もプレーヤーが多い。 住宅市場へのコンバージョンが他に比べて易い方法がある 一つ目は説明の必要はないだろう。 二つ目、住宅市場へのコンバージョンが比較的行い易い点にある。 アパートが建っている地域は通常住宅市場と重なる。不動産の全市場の内、住宅市場の規模が最も、そして圧倒的に大きい。 物件そのものの最終期において、追い出しの難点はあるが、解体、測量等の作業を行えば、土地としての売却ができる。 必ず出口が作れるという点は終値が読みやすい。事業計画の精度が高めやすい事に繋がる。 新築アパート投資の現状 日本全国を対象としてみると人口は減っていく中でも増え続ける新築アパート投資に対する警戒感は強いが、マクロ的視点だけに踊らされず、ミクロの視点、物件そのもの、周辺・環境等を踏まえ選別していく必要がある。 新築物件を対象とする場合、中古物件に比べて投資効率の優位時期が中古に比べると長くなりやすい。 新築物件の初期段階ではコストが最小限で抑えられる点で長期保有が成り立ちやすい。 一方で長期保有を実現するには、 購入した物件が賃貸ニーズに答えられ続けられるかが重要だ。答えられなければ空室損を招く。試算の結果、比較的長期保有になりやすい新築物件は、賃貸運営にかかる調査にも注視するとよい。 この記事で取り上げる新築アパートは主に新築建売アパートを主題材として解説する。 自身でアパートを建築しようと検討している方は、記事の中で紹介する問題点、解決すべき点を視野に入れ、全てを回避した形で素晴らしい事業計画を練るのに役立てて頂きたい。 新築アパート投資の失敗公式 新築アパート投資の失敗公式とは、修繕が必要な時期に差し掛かった頃にキャッシュが回らなくなる。賃料の下落と空室に堪え運営し続けてはいたが、修繕費用はとても捻出できないという事例だ。 これは非常に多く、修繕時期に訪れる資金ショートが非常に多い。 当サイトの各記事では事業計画を最重要視しており、その理論を理解されている方にとってはあり得ない話だろうが、現実には無駄に長期保有した事に起因した資金ショートが最も多い失敗公式だ。 再度になるが、投資対象を選択する際には必ず運営シミュレーションを活用して頂きたい。 https://karyu.co.jp/service-free-tool/simulation 新築アパートを購入しようという際、ほとんどの方が融資金を利用する。この融資利用計画と収支計画があまりにずさんであるがために、一定期間を超えた時、経営が厳しくなる。 元の計画では全く考慮に入れていなかった物件の売却を検討せざるを得なくなるが、残念ながら建物の減損とローンの残債の減少に差がないか、建物減少額の方が大きい。 こうして売るに売れない状況に陥る。おそらく新築アパート購入者において最も多い失敗だろう。 失敗公式が示す問題点 上記の失敗公式がもたらす問題は、債務超過状態が出来上がることだ。売却を検討しようにも価格が追いつかず最悪の場合、自己資金を投下して無理やり売却するしかない。 売却できなければ恐ろしいスピードでキャッシュが失われていく。それも叶わないならば任意売却しか手がなくなる。 ほとんどの場合、賃貸運営で物件が稼ぎうる収益以上の額を30年、35年という長期ローンを利用して物件を取得している。元本分さえ稼ぐかどうか微妙なのに利息も付されるのだからとてつもない損失を被ることになるのは想像しやすいだろう。 融資期間を延ばすというのは、一見良さそうなものだ。重要なのはキャッシュの動きであることは確かだ。しかしアパートの建物は19年から22年で減価していく。残債の減り具合にギャップが生まれやすいのだ。 新築アパート投資の強み 新築の建物は法定償却期間22.軽量鉄骨で19年まるまる使用できる為、融資が非常に使いやすい。まだまだ融資審査が緩いと言える現状では給与所得であろうと収入が多ければ、非常に高額の融資が利用できる。 ある意味どなたでも購入できるという部分が強みとも言える。 新築物件が融資利用しやすい事には理由がある。購入後10年程度は大きなコストが発生しにくい事である。 新築の強み 初期の運営コストが少ない 融資利用が極めて簡単な為、取得しやすい 一方で運営コストが軽い時期にも限度がある、精々10年程度であろう。10年を超えれば建物の価格は約半分まで下落している。売却に影響するノンリコース枠も当然下落する。 利益確保の為には実は精度の高い事業計画が必須である。 少し意地悪な表現をすると、参入しやすいからこそ、調査、事業計画を綿密に練らないと誰かの出口になりやすい。 新築アパートを投資対象に選んだ新規参入者の多くは将来、多大な負債を押し付けられていた事に気づくかもしれない。 新築アパート投資の弱み 先よりお伝えしているように建物減価幅が大きいことが挙げられる。木造のアパートは、22年後には法定耐用年数を過ぎ、金融上では資産価値はゼロとなる。担保価はある意味ゼロ以下としてみなされる。 22年間(軽量鉄骨は19年)で建物の価格下落率に対し、出口(売却)は定められるだろうか。 下落していく中で売り切って利益を確保するのは綿密な計算が必要だ。収益価格を算出する工程を思い出してみてほしい。全てを洗いざらい数字を拾い算出したであろう。 参考:「不動産の利回り完全解説。「意味と効果」を読み取り活用し尽くす方法 ☑」収益価格算出の過程、道程をご確認下さい。 アパートを購入する方は、不動産投資市場にしか存在しない。 居住用不動産で最も高く売れる住宅市場に売り出すことは、新築物件を対象とした場合、不可能である。 まず、運営だけでは取り壊し時期までに初期投下資金が回収できない。融資を利用していない場合でも物件取得費を回収する事はできないからだ。 退去難という話ではない。資金が圧倒的ショートを起こす。 理解できない方は「不動産の運営費・コストの全て。「事業計画」は把握から始まる ☑」をご参照頂きたい。 新築の弱み 建物減価幅が大きい=売却値の下落幅が大きい 事業全体での利益が出しにくい 債務超過に陥りやすい 住宅市場に売り出せない 新築アパート投資で勝てる条件 問題点は減価である。減価速度に勝つためには土地・建物の比率調整と取得価格で整えるしか方法がない。 この問題をクリアーしやすい土地取得から自身で新築を建築するという方法は非常に優れた事業プランが出来上がりやすい。いいとこどりである。 投資対象物件全体に対する土地比率の高い物件を選別する事。建物の減価速度を全体に対し緩やかにする。木造の物件の場合、年間の年間減価は全体の4.54%になる。 しかし、土地と建物の担保価が50%ずつの物件であればその半分の2.27%、資産価値の総体的な下落率を下げることができる。 投資全体の比率として土地の比率を上げることによって減価速度を緩め、その減価速度よりも残債の減りが少ないならば最終的な利益の確保ができる。もちろん賃貸経営上の収支がマイナスとなっていてはこの限りではないが。 いくら新築とはいえ15年も経てば修繕費用がかなり嵩む。いつ出口とするかが重要。 新築アパートの融資利用の際の注意点 新築アパートの強みであった融資利用。ここに関しては他の不動産と比べても非常に利用がしやすい。 事業性融資ではなくサラリーマン等の安定的な職業収入を持っている方に関しては安定収入を信用枠の穴埋めとして限界まで使用されてしまう事が非常に多い。 属に言われる「アパートローン」だが、実は事業資金ではない。住宅ローンやカードローンと同じ、消費性ローンである。 スルガ銀行その他で問題になっている不動産融資の問題、その殆ど全ては事業性の融資でさえない、最初から「消費者」を対象にしたローンを利用しているという事実がある。 消費性融資は、物件の価値を大きく超えた融資を非常に簡単に貸付られてしまうという問題点がある。 安定した勤め先、エリートサラリーマンや医者、弁護士といった士業等、本業収入の多い高属性の方は、本業の収入が返済原資として勘定され高額の融資を利用できてしまう。 物件の価値よりもローンが多い状態は債務超過。コントロールできていなければただの借金、無担保ローンと変わらない。 1物件1法人スキームの理屈サラリーマン等が不動産投資を利用する場合に利用されるアパートローンは消費性融資である。その為、個人信用情報の開示、記録がなされる(参考:CIC・情報開示とは)。 法人、個人事業主でもその業務に関する融資利用の際には事業性融資、プロパーローン利用は事業性である為、この信用情報機関への登録をされない。 この法人は個人情報機関への記録がないという部分を逆手にとって、物件毎に金融機関を変え別法人を用意し融資を利用しまくったというスキーム。これが大変問題になっている。 要するに銀行へ虚偽報告(この場合は借入を隠すという方法)で不正に融資利用していたという問題である。現在は、法人登記を調査する事でそのスキームの防止策としている。 事業性融資としてしっかりと実態(法人の力をつける)と合わせていけば融資の利用ができなくなるという事はない(借入枠を気にする事も実質必要ない)。バカな真似に皆飛びつくものだと冷ややかに見ていたプロは多い。 中古アパート投資の特徴 中古アパート投資は、新築の際に触れてきた価格の下落が少ないか、もしくは全くないという条件下で投資できるというのが最大の特徴だ。 一方、賃貸経営を行っていく上で最も重要な賃料収入の大部分は建物から得られる。その建物そのものが中古となっている分、収益の源が弱い、運営中の難易度は高いと言える。 また中古は、建物分の法定対応年数が残り少なく融資ロジックに合わせた調達額、期間設定が必要な為、一般的には融資利用が難しいとされている。我々には何も難しくないだろう。 中古アパートに対して物件の特性をつかみ正しい事業計画を練るならば融資の利用は新築物件と変わらないか、もしくはそれ以上に簡単に利用することができる。 中古アパート投資の失敗公式 中古アパート投資の失敗公式は予想よりも賃料収入が少ない、空室が予想以上に増える、修繕コストを甘く見積もっていたといった賃貸経営上の問題、事業計画の漏れがほとんどを占める。 中古住宅の最も大きな問題点は、先に紹介した「不動産の運営費・コストの全て。「事業計画」は把握から始まる ☑」を確認いただければ、殆ど全て解決でき、賃貸経営に尽力するのみで足りる。 中古アパートを投資対象として失敗するのは「見立てが甘い」。これが殆ど全ての要因である。 中古アパート投資の強み 先にも述べたように中古アパートの場合、取引価格の大部分を土地が占めることになる。 投資対象に対して時間があまりに長期でなければ、購入時と売却時の値段がほとんど変わらないか、もしくは高くなるケースさえ存在する。 賃貸経営をうまく行っていけば、期待した利回りを十分に確保することが可能だ。不動産投資の中で売却時の値段が下落しないという対象物は法定耐用年数を超えた物件だけである(市況変動無しとして考えた場合)。 最も高く売りやすい住宅市場に売り出す事が可能な土地にコンバージョン(不動産用語としては用途を変更すること)することを、最も低コストで行えるのがアパートである。 そう言った意味で鉄板の勝利の方程式を作りやすい。 中古の強み 価格下落がほとんどない 純資産が増えやすい=信用を増やしやすい。 当初、想定した利益をほぼ確保できる(正しい見立てをした場合に限る) 運営力を活用することで価値を劇的に向上することが可能 中古アパート投資の弱み 一方で中古不動産であるが故の弱みは、賃貸ニーズを満たすための経営努力が必要であるという点だ。 いかに売却時の価格が読みやすく、下落の心配が新築に比べて少ないとはいえ、運営中の利益を予定通りに確保するためには努力が必要だろう。 資金計画、シミュレートを行ったとしても、手放しで予想した収益を確実にやられるとは限らない。空室率、家賃下落と闘わなければならないのは同じ。 物件の立ち位置にあった強みを引き立て、同規模、同地域、同価格帯の賃貸物件の中で何か光るものを作らなければ、多数ある他の競合に打ち勝つ事はできない。 数字の見立てが立っていても、その物件の賃貸ニーズを満たす、または向上させるのは、保有期間中の運営努力に依存する。 中古の弱み 新築よりも賃貸経営の難易度は高い 購入前の物件調査・特に市場調査が重要 一般的に融資の利用が難しいとされている(期間を取りにくい) 中古アパート投資の勝利の方程式 中古アパートを投資対象とする場合の勝利の方程式は出口戦略が上手く成り立ちやすい事にある。 アパート探す際にも土地を購入する目線で物件を探すというのが大きな利益を出す第一歩だ。 新築と比べ、基本的に建物比率がほとんどないから、実際の価値は土地に依存するといってもいい。投資先の可処分額(担保価:売却時受取額)が下がらなければ、賃貸経営における税引き後キャッシュフローの蓄積は利息と言える。 取りやすい戦略としてはやはり土地の視点、見立てを重視した投資先選別だろう。利回り重視で選別した場合、運営力如何だけでなく、終値が覚束ない為、勝率は著しく落ちる。 土地の価値が十分にあるアパートは賃料収入もついてくるケースが多い。まれに大きな敷地に小さなアパートが建っているのみという税金対策に立てたのであろう物件もあるが。 売却までの期間中に運営ができる収益が確保されていれば(借入比率の関係)、投資対象に入るかもしれない。 土地の見立てに関しては「積算評価 ( 原価法 ) ・時価評価自動計算 ☑」を活用して頂きたい。住宅市場に向けての売却に際しての注意点等もシミュレーション下部に記載している。 重視するものは土地、次に保有期間中の必要収益を最低限あげてくれるかどうか。 この見立てによる物件選別のメリットはどのような情勢になろうと、融資の利用がしやすいことにある。 住宅ニーズのある地域ならば土地は住宅市場で売れる。資金回収が固く可能とみれる物件に対しては金融機関は積極的に融資してくれる。 最大のポイント アパートとして売られている場合、買受け人は基本投資家だ。そのため土地の価値が大きくなろうと賃料収入が少なければ購入できる人が少ない。 つまり、市場の中には本来土地として売却した場合、非常に高額で売れる可能性を秘めた物件が潜んでいる。 仮に年間賃料収入が600万円しかないために1億で売られている物件があるとしよう。表面利回りは6%だ。 この対象物件は収益が弱く資金調達があまりできない。 そのために購入できる投資家が少ない。しかし、その物件を支えている土地をよく精査してみると実需市場に売却することができれば、1億5000万円で売れるであろう物件だ。そう言った物件が埋もれている。 勿論、我々はその売却過程の追い出しコストや造成費用等をしっかりと把握し、現実に手にできる受取額を基準として事業計画を練らねばならない。 注意点 住宅市場における土地の変動は単に地価マップで路線価をみるだけでは足りない。 その地域において最もニーズのある土地の大きさから大きくかけ離れたサイズの土地は同じ単価で売れるということはない。 その地域において取引されうる住宅市場の価格帯というものがある。 適正サイズ(最もニーズのあるサイズ)を大きく超えた場合、土地単価は低くなる。皆、土地を見るとき坪いくらか?と気にするが、最も好まれるサイズで地型のいい土地と2倍、3倍の大きさの土地の単価はまるで違う。 地域のニーズや見立てを行う場合、地域の新築建売住宅の価格を見て参考にすると非常に掴みやすい。 どのような土地のサイズの物件がいくらで売れているか、これが住宅市場における価格目線だ。建物代を控除した金額が最も高く売れるサイズ、そして単価だと捉えれば間違いようがないだろう。 但し、宅建業免許を持っていない場合、土地を分割することはできない。それでも投資市場で取引金額が成立する価格と住宅市場で取引される金額に大きなギャップを見つけることができるハズだ。 そういった物件は存在する。 アパート投資の必勝パターン 利回りばかりを重視して物件を探した場合、このような物件に気づくことは難しい。中古アパートで物件を見立てる際、この土地に着目して物件を探し、購入する方法は鉄板法則といえよう。 そしてもう一つ、通常アパートの賃料変動は新築時を10としてみた場合、下落が進むと最終的に3割5分ほどにまで賃料が下落する。その下落した物件を再生する方法である。 下限物件に対し、全力のリノベーションを行うと、収益の劇的な向上が望めるケースがある。 私の経験上、地域の新築賃料の35%迄落ちた物件が最下限物件。90%程度迄は回復し得る。 十分な価値ある物件に再生することによって、売却時の価格を大きく伸ばすことができる。もちろん土地の価値に視点を置き素晴らしい物件を手に入れた場合に有効な手法である。 土地の見立てを誤っている場合、改修費用の資金調達が難しい。私は物件取得額に対して2.8倍の改修費用を資金調達して改修した事がある。 物件取得時もほぼ満額融資を利用、3年後に追加で2.8倍のリノベ―ション費用、実に合計で物件取得額の3.8倍の資金を対象物件単体で調達した。 土地の価値があるのに高い値段で売れないという場合、物件の収益性が弱いことに起因している。 その問題点をクリアし収益力もつければ高額で取引される条件が揃う。土地のサイズ変更ができない一般投資家の方もこの方法であれば価値ある物件を価値通り、それ以上で売り抜ける事が可能だろう。 この賃料の再生を活用する場合、当然事業計画上のコスト対収益の増加比率をよく検討する必要はある。 事業計画が優れたものであれば改修費用も調達できるだろう。 中古アパートの融資利用POINT 中古アパートで比較的難しいといわれてる融資の利用だが、多くの場合、アパートの賃料収入が多く確保されていると、実際の土地・建物の価値以上の値段で売り出されることが多い。 融資をする側の立場に立って想像するとイメージが沸くが、仮に返済が滞った場合、一体いくら回収できるかというのが最も気になる。それが本質的な担保の考え方だ。 賃料収入がいくらあろうともいざとなった場合に即現金化できる金額が低い場合、融資の利用は難しくなる。 賃料収入による返済原資と物件そのものの担保価が一致した点が、融資利用ができる基準価格(ノンリコース枠)である事を覚えておくといいだろう。 そこを基準に自身の事業計画と見比べ、自身の他資産にて、または、自身の給与収入を売りに信用を埋めるのかを検討する。 自身の信用余力がどの程度あるのか、対象物件の担保力はいくらなのか、その事業計画中にはどの程度自身の信用枠を使用しているのかをこちらでしっかりと把握しておく事が重要である。 土地の価値が高い場合、賃料収入が確保されていれば比較的資金調達はしやすい。 まとめ 非硬固建物に属するアパートについて、その特徴、建物の減価速度の速さから投資対象に与える影響を最初に解説し、それぞれの問題点、解決策、利点を確認した。 個別に新築アパートと中古アパートの公式、失敗のよくある例を示した。特性を考慮し、組み立てやすい投資戦略、鉄板ともいえる戦略と投資手法の例示を行い進めてきた。 新築物件は、数字的な面での調整が難しく、利を生み出せるか頭を悩ますケースが多くなるだろう。また、長期間の賃貸ニーズ、需要をよく検討しなければならない。 中古物件は、数字的な面では成り立ちやすく大きな利を得られる事業計画が生まれるケースも多々もある。一方、運用期間における賃貸経営計画には注意を払わなければならない。 最初に明示した「予定総収益と残債額をコントロールするものが勝ちを得、減価速度の調整を誤れば必ず負ける。」の法則が全てと理解頂けただろうか。 不動産投資・経営の利点は、市場の値動きが緩やかであること、そして事業計画が事実に則って組み立てやすい事にある。事前調査、事業計画の重要性である。 綿密な調査、事業計画が多くの問題を事前に解決し、利益を大きくしてくれる。 あとがき 一般的にアパート経営というと、その物件を引き継いだ場合、従前のように保有しているだけで一定以上の利益を確保できる、不労所得の代表格と捉えている人は多い。 しかし、その対象を購入、賃貸用の物件を購入するという事は事業であり、仕入と評した方が適切だろう行為。 現在、ただやみくもにアパートを保有したからといって利益は見込めない。それどころか定期収入の魔力は損失を被っている事にさえ気けなくなる程に強い盲目性を生む。 事業には必ず、調査、事業計画が必要であり、計画が杜撰であれば上手くはいかない。 大きな資金を動かすのだから、いつも以上に綿密に確実な利益をものにするように努めたい。 皆様のお役に立つ記事になっている事を願う。